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【カンパニーメン感想】米国サラリーマンの悲哀と復活を描いた良作

2020年4月16日

2008年に起こったリーマン・ショック後の出来事を描いた映画です。

アクションではなく失業した男たちのその後を描いた内容ですが、途中で厳しい場面がありつつも、最後は前向きなままで見終えれたなかなか気持ち良い作品でした。

今回はそんな10年前の作品のレビューをお送りします。

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エリート社員が解雇されたその先とは?

主演はベン・アフレック。

駄作と言われた「パール・ハーバー」(2001)で名を挙げた俳優さんだが、近年では「消されたヘッドライン」(2009)や「ザ・タウン」(2010)「アルゴ」(2012)「ザ・コンサルタント」(2016)など、深みのある良い作品によく出ているので結構好きな俳優さんの一人。

そんなアフレックが今回演じるのは、がエリート社員として順調に会社生活をエンジョイし、奥さんも息子さんもいて、ゴルフして、いい車に乗って郊外の街で気分よく生活しているボビー。

いつものように出社したところ、いきなり「クビ」を宣告されるという悲劇が彼を見舞います。

訳の分からないまま、宣告してきた人事課の女性上司に詰め寄るも、決定は覆されることなく、そのまま箱に持ち物を詰めて会社を出ていかざるを得なかったのです。

よくアメリカの映画やドラマでこういうシーン(会社を辞める時に荷物を箱に入れて持ち帰る)を見かけてきたのですが、まさにこのシーンのボビーがそれでした。

背景にはリーマンショック後の不況があって、会社はまだやり直しのきく30代の若手社員のボビーを最初に切ったという感じです。

もちろん首にされたボビーは憤懣やる方ないのですが、いつもより早めに帰宅した父親を見た息子や妻が「え?」的な顔で見てくるのは、同じ男としてなかなか辛いシーンでした。

その後、ボビーは再就職するために支援センターに通い始めますが、なかなか次の再就職先が決まりません。

センターでは同じような境遇の失業者が大勢いて、ボビーと同じブースにいた仲間たちは慣れた様子で「ま、頑張ろうや」と励ましてくるのですが、元エリート社員だったボビーは納得いくはずもなく・・・

「なんで俺がこんなところにいるんだ?」

ベテラン社員も解雇のターゲットに

ボビーが在籍していた元の会社のお偉いさん(役員)ジーン・マクラリーを演じるのがトミー・リー・ジョーンズ。

このマクラリーが愛人の家でベッドを共にしているとき、愛人から会社で起きていることを聞かされます。

彼女は実はマクラリーの会社の人事部の社員で、ボビーに解雇を言い渡した張本人でした。

会社の方針で次々に社員に解雇通知を告げる仕事を担っていたのです。

「私だってこんな役割は嫌だわ」

お互い裸になったベッドの上で、上司であるマクラリーに社員に解雇通知を言い渡す辛さを語るシーンでしたが、なんというか、この社内不倫の濡れ場の描写にやたらと「課長 島耕作」感が出ているなと思ったのは私だけではないはずです(きっと)

さらに心に不穏なさざ波を立たせたのが、この愛人女性が電話が鳴って仕事の件で呼び出されたときにベッドから離れて仕事モードに切り替わった後の立ち居振る舞い。

いかにも物事の切り替えの早い有能なキャリアウーマン的なドライな仕草で、マクラリーと愛人関係を結んでいるのもあくまで自分の出世のためであって、何か事が起きれば彼女はあっさりマクラリーを裏切るだろうなと邪推をさせられる描写でした(実際にほぼそうなる)

ちなみにこの人事部の女性社員役の女優さんはマリア・ベロ。

ロード・オブ・ザ・リングで人間の王を演じたヴィゴ・モーテンセンが主演する「ヒストリー・オブ・バイオレンス」(2005)で妻役を演じていて印象に残った女優さんです。

ワイルドな美人風ですが、自分的には女性ロック&カントリー歌手のシェリル・クロウを彷彿させられます。

さて話は戻って、割と仲の良かった若手社員ボビーを解雇させてしまった役員のマクラリーは、またさらに辛い事態に遭遇します。

それは会社創立以来の仲間であり、同志的存在だった営業畑のフィルをも解雇せざるを得なくなったということ。

フィル役の俳優さんはクリス・クーパー。

いかにも悪役が似合いそうな風貌で、実際にマット・デイモン主演の「ボーン・スクレマシ―」で冷酷なCIAの上司役を演じていた姿が自分の中で非常に強いイメージを持っている人です。

フィルはマクラリーと同じ年代で、営業本部長的な重役の地位にある立場でした。

しかし世界的不況の影響は古参の生え抜き社員をも解雇せざるをえないほど、会社の業績を圧迫させていたのです。

というか、社長率いる経営陣は株価を上げるために社員のリストラを進めていたという方が正しいのかもしれません。

この創業以来の盟友の解雇決定に怒ったマクラリーは社長に詰め寄ります。

「なぜだ?彼は俺たちと一緒に会社を大きくしてきた仲間じゃないか!」

しかし社長は首を横に振るのみでした。

こうして不幸にも60代(おそらく。少し記憶が曖昧ですが)を越えて失業してしまったフィルは、なすすべもなく家に帰り、ふさぎこむようになります。

それまで順調に会社員として生活を送り、会社に貢献してきたと自負もあったフィル。

家ではリッチな生活に慣れ切った妻が夫が首になったとは露知らず、次の旅行の計画を話し出す始末です。

そんな妻や家族に本当のことを言い出せずに、フィルは伝手を辿って再就職に動きますが、年齢を理由に断られます。

打ちひしがれ、なすすべもなくなったフィルは、家を出て会社に行くふりをしてバーに入り浸る日々を過ごすのでした。

このシーンはかなり辛くて、フィルの表情が憔悴して希望を失った感じに変化していく様は、言いようのない悲しみと不安を画面越しに感じさせるほどです。

日本でも解雇された中高年のサラリーマンが、公園で時間を潰すことがあったりしました。

洋の東西を問わず年齢を経た再就職は厳しいだけでなく、家庭での居場所すら失わせてしまうのですね・・・

そんなかつての仲間をバーで見かけたマクラリー(トミー・リー・ジョーンズ)は酒を辞めて映画館でも行こう、と誘います。

彼をこんな状態にしてしまったのは、役員でありながら社長を止められなかった自分の責任でもあると。

マクラリーはフィルを介抱しながら、なんともいえない気持ちになるのでした。

このシーンで私の胸に去来していた思い。

それは、

「あんたが会社を作ってフィルを雇ってあげなさい」

ということ。

愛人を持つくらいに余裕があるんだし、今の会社でも、もはや昔同志だった社長は完全に仲間を向捨てる方向に動いていて、たぶんこのままだと愛人も社長につくのは映画の流れで分かるのだから、今のうちにさっさとフィルを救ったりなさいと。

というか、それしかフィルの立つ瀬がないだろう?と。

スクリーンを見ながらめちゃくちゃ強くそう思っていたのですが、残念なことにフィルは非常に不幸な最期を迎えます。

いつものように仕事に行くふりをして帰宅した後、奥さんに「ゴミ捨てといてね」とか言われながら「ああ」と短く答えて車のあるガレージに行き、近くのゴミ箱にゴミを捨てると、そのままタバコを吸って車に乗り込むのです。

そしてそのまま自らの命を・・・・

このシーンは映画の中で最も辛い場面でした。

中高年者の再就職の難しさ、それまで会社に尽くしてきた想いや誇りが一瞬にして無にされてしまうたこと・・・

実際にこういう形で命を絶ってしまう人は多かったと思います。

困った時には身内の助けが一番

一方でなかなか再就職先が見つからないボビーは、まだ若いということもあってか、フィルほどの追い込まれ感はありません。

というのも、奥さんのお兄さんが助け舟を出してくれたから。

お兄さん役はケヴィン・コスナー。

ボビーからすれば義兄にあたります。

義兄はオフィスワーカーだったボビーとは違って、バリバリの肉体労働者。

いわゆる大工さんで、職人を抱えて家のリフォームなどを請け負っています。

ボビーはそんな義兄の仕事や人柄をあまりよく思ってはおらず(ホワイトカラーのほうが上だと思っていた節があった)、以前から仲はよくありませんでした。

でも仕事がない中で収入も厳しいので(奥さんが看護師で働きに出ていた)、ついに折れて義兄に「働かせてくれ」と頼むのです。

最初は慣れない力仕事に悪戦苦闘しますが、徐々に慣れてきて最後のほうには職人の人手が足りないので、就職支援センターの仲間を呼んで皆で一緒に仕事をするまでになります。

この仲間たちとのやり取りが楽しくて、支援センターでもジョークを言い合ったり、公園でフットボールをして遊んだりと、失業中でも明るさを忘れない前向きさが映画全体の救いになっていました。

そんな義弟たちを悪くない気持ちで見ていたケヴィン・コスナーですが、実は彼らに仕事を与えるために顧客に頭を下げて営業していたことを、ボビーは知ります。

自分がかつて秘かに下に見ていた義兄や、その職業にまつわる職人たち。

それがいざという時には自分を助けてくれて、あまつさえ新たに知り合った失業者仲間まで受け入れてくれた。

そのときにボビーは「このままこの仕事を続けていっても良いな」と感じたと思います(そんな感じで心理描写が描かれていた)

後にかつての上司であったマクラリーからの仕事のオファーを受けた時も、ボビーは逡巡し、義兄との仕事を継続しようと申し出るのです。

しかし義兄はそれを断りました。

「お前は役に立たないからな。そっちの仕事のほうが向いてるよ」

すげなくボビーの申し出を断るも、暗に「新しい道を踏み出せよ」とエールを送ってくれたのでした。

義兄はボビーが内心はマクラリーの新規事業に参加したがっていること、でも自分に世話になった恩を感じていために踏み出せないでいることを分かっていたのです。

この義兄役のコスナーの男前な演技は本当に宜しくて、決して言葉は多くないし、無愛想なんだけど、ちゃんと相手のことを見ていて、本当に困った時は救いの手をさしのべる無骨な優しさがすごく胸に響きました。

境地に陥ったときに触れた優しさって忘れないものなんですよね。

私も若い頃に海外を一人旅をしていたときに、泊まる場所がなくて困り果てていた時に、ようやく見つけた民宿(イギリスではB&B)で優しい対応をしてくれた女主人のことは今でも忘れませんから。

無骨だけど心のこもった優しさを示してくれる職人の世界と、昔の仲間でさえも平気で首にする大企業の冷たさとの比較が如実に表れた描写でした。

そして大団円へ

最後まで会社に残っていた役員のマクラリー(トミー・リー・ジョーンズ)にも解雇の魔の手は伸びてきます。

共に会社を設立したはずの社長が、かつての仲間マクラリーをフィルと同様に「切った」のです。

その宣告をしたのは、愛人だった人事部の女性社員サリー。

最初に直感したように、彼女はやはり「強いほう」についたのでした。

まあこれも仕方ないでしょう。

会社務めを無事に全うしたければ、上の言うことに従うのは当然ですし、自分自身の立場も危うくなりますから。

とはいえマクラリーのは会社の株を持っていたり、資産もあったので、ボビーやフィルのようにすぐさま大変な状況に陥ることはありませんでした。

この時点で「この人が会社作って、みんなを救うのだろうなあ」と確信はしていましたが、まあ結局はそうなります。

そのあたりの詳しいことはネタバレになるのでこれ以上は言いませんが、とりあえず今までの登場人物が救われる形になります。

惜しまれるのはフィル。

マクラリーがもっと早く決断していれば、彼はあんな最期を迎えずに済んだのです。

きっと仲間だったマクラリーの声掛けなら、喜んでそれに応じていたでしょう。

そしてまた長年培った営業力を仕事に生かすことでき、生き甲斐も見出していたはずです。

でもそれが結局叶わなかった。

そういうフィルの最期を考えると「失業」というのは単に生活の手段を失うだけでなく、その人の「培ってきた人生や誇り」も奪ってしまう残酷なものだということを改めて実感させられた気がします。

まとめ

映画全体のテンポは良く、配役も絶妙だったので、社会派ドラマながら飽きずに最後まで見ることができた作品でした。

映画の設定と演出がリアルすぎるというのもありますが、出演俳優が豪華なのも特徴。

しかも皆、実力派俳優ばかりなので、そこがまた映画のリアル感をいや増させてくれたのでしょうね。

今作はリーマン・ショック後の世界的不況のあおりをくらったサラリーマンの悲哀と復活を描いた内容ですが、これは今の世界状況と酷似しています。

違うのはリーマンのときはまだ企業群の業績に響いただけで済んでて、映画で出てきたような現場仕事やサービス業にはそれほど影響はなかったということ。

今回のウイルス感染騒ぎはむしろサービス業に相当な打撃を与えているので、不況の波が街に直接覆いかぶさっているという印象です。

こんなときこそ「マクラリーの決断」が必要だと思いますね。

そしてこの映画を見て何よりも胸に染みたのは、どんなに辛い時でも仲間や家族、親しい人たちと支え合って乗り切ろうという生き様。

フィルが悲しい結末を終えたのも、それを相談できる仲間や家族がいなかったからだと思います。

胸の内に苦しみや悲しみを共有できる仲間や、何も言わずに応援してくれる身近な人の存在が、いかに大切なことか。

この大変な時代だからこそ、勤勉に真面目に働く人々の救いになる映画ではないかなと思います。

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