テクノロジーを活用して「食料生産」を改善していく「米国企業」の紹介です。
農業技術、食品製造技術、物流技術、栄養学はもちろん、データ分析、IoT、人工知能なども応用するため、そうした技術をもつ企業は今度ますます伸びていくものと思われます。
人口増による食料不足だけでなく、環境の変化による食料生産の低下なども懸念されるため、とくにテクノロジーでは世界有数のイノベーション大国である米国は有利でしょう。
人間にとってなくてはならない「食料生産」を大きく変えうる可能性を持った「フードテック(フード&テクノロジー)企業」を紹介していきます。
米国のフードテック企業まとめ
ビヨンド・ミート
植物性の代替肉製品を開発・製造・販売する企業です。
2009年に創業され、その後、植物性の肉代替製品を主力商品として世界的に知られるようになりました。
ビヨンド・ミートの代表的な製品には、植物性バーガーパティ、ソーセージ、ミートボールなどがあります。
これらの製品は、大豆、えんどう豆、ピープロテイン、マッシュルームなどの植物性原料を使用しており、肉のような食感や風味を再現することを目指しています。
ビヨンドミートの代用肉は、従来の肉製品に比べて環境負荷が低く、動物福祉に配慮された選択肢を提供することで、持続可能性に焦点を当てています。
また、健康意識の高まりや、肉消費の削減を目指す消費者の需要に応えるための製品としても注目されています。
ビヨンド・ミートは、その製品の普及を目指し、世界各地の飲食店やスーパーマーケットで取り扱われています。
さらに、食品小売り業者との提携や新製品の開発を通じて、市場拡大を図っています。
インポッシブル・フード
スタンフォード大学生化学名誉教授のパトリック・O・ブラウン氏によって設立された企業です。
植物性の代替肉製品を開発・製造しており「インポッシブル・バーガー」が有名です(米国のバーガーキングで販売)
インポッシブル・フードの製品は、ヘムと呼ばれる植物由来のタンパク質を主要な成分として使用しています。
ヘムは、肉の風味や色を再現するために重要な役割を果たしており、その他の主要な原料には大豆タンパク質、小麦タンパク質、ココナッツオイル、ポテトタンパク質などが含まれます。
インポッシブル・フードは、レストランチェーンや飲食店、スーパーマーケットなどで広く販売されており、消費者の間で人気を集めています。さらに、新しい製品の開発や販売拡大を通じて、市場における存在感を高めています。
タイソン・フーズ
アメリカ合衆国に本社を置く世界有数の食品加工企業で、肉製品や食品加工品の製造・販売を行っています。
1939年の設立の歴史をもつ老舗企業でもあります。
主に食肉を扱う事業を展開していますが、フードテックの進化にも注目し、植物ベースの代替肉製品に関心を示しています。
以下に実例を紹介します。
・2019年:植物ベースの代替肉製品を開発するフードテック企業「ベルビダ(Beyond Meat)」に投資
・2019年(?):タイソン・フーズが展開する自社ブランドで、植物ベースの代替肉製品を販売
・2021年:タイソンフーズが出資する、イスラエルの代替肉企業「フューチャーミート」が培養鶏肉のコストダウンに成功
老舗企業だけに、生き残りには敏感ということでしょうか。
食肉の未来を見据え、資金のあるうちに新たな業種への投資や自社ブランド化も素早く行う点が、いかにも百戦錬磨の米国企業らしいですね。
イートジャスト(旧:ハンプトンクリーク)
2001年に創業され、サンフランシスコを拠点とするフードテック企業です。
代替肉製品や代替卵製品を提供しています。
その製品には、植物性のハンバーガーパティ、代替卵の液体製品、調理済みの代替卵製品などが含まれます。
「牧場を走り回れる牛よりも、窓がなく狭い養鶏場に死ぬまで閉じ込められ、一生を卵を産み続けるように強制される鶏のほうが動物福祉において悲惨だ」という思想から、同社はとくに鶏卵や鶏肉の代替化を進めています。(クリーン・ミート/培養肉が世界を変える」本の感想と要点まとめより)
代替肉製品は、植物性タンパク質や植物性油脂などを使用し、動物性の肉に近い風味や質感を実現。
代替卵製品は、植物性の成分を使用しており、卵のような調理特性や栄養価を提供しています。
Justの製品は、スーパーマーケットや飲食店などで販売されており、一部の製品はフードサービス業界向けにも提供、アメリカをはじめ、世界中の多くの国で展開されています。
パーフェクト・デイ
乳製品の代替品を植物由来の成分で製造することに特化した企業です。
牛の乳ではなく、微生物を活用して独自のアニマルフリーな乳タンパク質を開発、2020年に世界で最初に精密発酵乳タンパク質を発売しています。
パーフェクトデイの精密発酵由来の乳タンパク質を使った牛乳が今夏、ついに市販化
人間と同じように「妊娠すると乳を出す」習性を利用したのが「乳しぼり」だと言われています。
そのためアメリカでは人工授精で常に牛を妊娠状態に置かせることで、乳を搾り、生まれた子牛はその日に親牛から引き離されて思春期になると、母牛と同じように乳牛になる、もしくは子牛肉などに使われるとか。(クリーン・ミート/培養肉が世界を変える」本の感想と要点まとめより)
そうした状況を変えるために開発されたのが「牛を使わない、アニマルフリーなミルク」を同社は製造・販売しています。
動物福祉の点でだけではなく、牛を飼うことで生まれる環境破壊(餌のもとになる作物を作るための森林破壊など)をクリアできる持続可能な代替ミルクとして支持者は多いですね。
スーパーマーケットやオンラインの販売プラットフォーム、一部のレストランやカフェでも提供されています。
エブリ・カンパニー(旧:クララフーズ)
動物性の原料を使用せずに製造される植物ベースのタンパク質製品を開発しています。
同社の主力製品は「卵白の代替品」です。
従来の卵白の代わりに植物ベースの原料から製造され、栄養価や料理への適用性が類似しています。
代替卵白は、ヴィーガンやアレルギーを持つ人々など、動物性の製品を避けたい人々にとって選択肢として注目されています。
「液卵白などの採卵鶏は畜産動物のなかでも最悪の扱いの受けている」として、その状況を打破するために立ち上げた企業ということ(クリーン・ミート/培養肉が世界を変える」本の感想と要点まとめより)
加えて餌に何が混じっているか分からなかったり、遺伝子操作で生み出された鶏の卵ということもあり、こうした代替の卵白は今後もヘルシー志向の層に強い吸引力をもち続けると思います。
まとめ
フードテックの中でもとくに「代替」食品を扱う米国の企業を取り上げました。
今回紹介した会社の中で上場企業としては、ビヨンドミート、タイソンフードの2社しかありません。
それ以外の企業は非上場ということで、これも自分たちのポリシーや理念を守り続けるために必要であることは理解できます(株主やマーケットからの横やりが入らずに済む)
とはいえ、上場中の大手フードテック企業も、そうしたプライベート企業に投資をしています。
将来的に起こりえる「食料不足」を見越したビジネス判断かと思われますが、いずれは環境や人々の意識の変化によって、今回取り上げた代替食品が主力になる日がくるかもしれません。
そうした未来を想定して、これらの企業に就職や転職、投資を検討してもよいかと思います。
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